場所にとらわれない働き方のすすめ。働き方に選択肢を作ることは、会社と個人に「豊かさ」をもたらす

 株式会社LIFULLが提供する「Living Anywhere Commons(以下LAC)」は、「場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方(Living Any where)をともに実践することを目的としたコミュニティ」であり、月額27,500円でコミュニティの会員になることで、約40ヶ所の日本全国の個性的なワーケーション施設を自由に利用することができるサービスです。

 LACの立ち上げから関わる事業責任者の小池 克典さんに、コロナ禍でも会員数を伸ばし続けてきたLACの取り組みから、ワーケーションの実情をお伺いします。

※TOP画像:LAC八ヶ岳北杜での実証実験、”生活空間ごと持ち運ぶ” バンライフの様子

【小池 克典氏プロフィール】

 株式会社LIFULL 地方創生推進部 LivingAnywhere Commons事業責任者・株式会社LIFULL ArchiTech 代表取締役社長・一般社団法人LivingAnywhere 副事務局長。1983年栃木県生まれ 株式会社LIFULLに入社し、LIFULL HOME’Sの広告営業部門で営業、マネジメント、新部署の立ち上げや新規事業開発を担当。現在は場所の制約に縛られないライフスタイルの実現と地域の関係人口を生み出すことを目的とした定額多拠点サービス「LivingAnywhere Commons」の推進を通じて地域活性、行政連携、テクノロジー開発、スタートアップ支援などを行う。

小池 克典氏

場所にとらわれない働き方が「豊かさ」につながる

 LACは2017年に一般社団法人として立ち上げた後、2019年に事業としてスタートさせました。当時から、グローバルをみるとデジタルノマドと言われる場所の制約なく働く人がたくさん生まれてきており、オフィスなどに出向くことなく、働く世界がやってくるということは予見していました。

 一方、日本では満員電車が当たり前でオフィスに通い詰めて働き、家を買うと高いローンを払い続けるというライフスタイルが変わっていませんでした。つまり、テクノロジーは進歩してきてはいるが、我々の生活スタイルが変わっておらず、これではマーケットが広がらないという課題感を感じたことが事業をスタートさせた1つの背景にあります。

 もう一つ、AIとロボティクスの発達が進むことによって、人間がする仕事が少なくなり、将来的に全体としては所得が落ちると予想しました。しかし、東京では家賃は上がり続け、生活にかかるコストはどんどん高くなっている。これでは、日々の生活やご飯を食べるために働き続けるという状況になってしまいます。このような生活を続けることは果たして「豊か」だと言えるのか。これがもう一つの課題感としてありました。

 逆に地方はというと、人口が減るに連れて、空き家も増加してきており、うまく活用されていませんでした。ここの2つの課題を、発達してきたオンラインテクノロジーを活用できれば解決につながり、さらに我々のコンセプトである場所の制約なく暮らすことができる「Living Anywhere」を実現し、豊かな社会が実現できるのではないか。このことがLACを始める上での背景となっています。

LACについて話す小池 克典氏

働き方に多様性を持たせることは採用に直結する

 働き方の部分ではコロナ禍もあって、場所にとらわれずともオンラインで働けることが明らかになりました。

 IT企業の本社は大半が東京圏にありますが、これはもともと採用を考えた時に有利であったためでした。利便性などを考えた時、やはり東京がよく、働き手としてもそのような場所を求めていたからです。しかし、テレワークが進んだことによって毎日出社する必要性がないことがわかってしまいました。そのことによってテレワークで働くことを望む人が増えたという事実があります。

※出典:「第3回自社のリモートワーク、テレワークに関する調査」(転職サイト「doda」)
半数以上(50.4%)がリモートワーク、テレワークの制度・環境が整っていることが重要だと回答している。

 つまり、市場として、そのような場所や時間の制約がなく働くことができる環境が求められているので、そのような働き方を用意するということが採用に直結するようになりました。

 このようにニーズが明らかになってしまった以上、企業としてはテレワーク等の新たな働き方を導入するかしないかの意思決定が必要になってくると思います。

 たとえ、テレワークを導入しないとしても出社する理由や出社してでも来たいと思えるような会社を作り上げなければなりません。

 そういう意味でも、いま企業ではサテライトオフィスをはじめとしたテレワークの働き方についていつからやろうということを考えるよりかは、今目の前でやるかやらないかを決めてそれに応じた働き方の設計を組み立てていくのかを考えていくフェーズに入っているのだと思います。

オフラインのコミュニケーションを組み込んだ働き方の設計が重要

 業務としては効率的なテレワークでも、ただそれだけでは大きな落とし穴があります。例えばフルリモートの在宅では仕事としては効率的で、会議を取る無駄もないです。しかし、得たい情報だけを得て、最低限のコミュニケーションを取るだけのいわゆる目的遂行型の行動パターンになってしまいます。これが何を意味するかというと、短期的に見れば業務が効率化されますが、それ以外の予想していなかった情報が手に入らなくなるため、中長期的にみると新たな価値を生みづらくなってしまう危険性があります。

 そこを考えた時、テレワークを進めていく上では、意識的なコミュニティ作りが大事だと考えています。

 我々LACではワーケーションを進める上で、「ライフ+バケーション」ではなく、「ワーク+ロケーション」と独自に定義し直しています。これは、ただその地域でリフレッシュするために景色や食を楽しみながら働くということではなく、その地域で、社内だけでなく外とのコミュニケーションやつながりを生むことが大事だとワーケーションに対する視点を変えるために用いています。

LACうるま

 というのも、ワーケーションでは地域で生まれるつながりやコミュニケーションによって新しい課題や発見を知り、それがビジネスを生む種になっています。

 実際ワーケーションを利用している声としても、景色、食文化を感じること以上に人同士の交流、未知の発見に価値を感じている利用者が多いです。なので、企業がサテライトオフィスをはじめとした地方で新たな働き方を考える上でも、ただ経済的な条件や立地条件を踏まえてあらたな働く場所を構えること以上に、コミュニティから生まれるコミュニケーションを大事にして、そこからどのように新たな知見を価値にかえていくのかを考えることが大事になってくるのではないでしょうか。

LACうるまでのコンポストワークショップの様子

地方に飛び込むことが人材育成にもつながる

 LACでも若手社員を地方に送り込んでいますが、地方で働いていくうちに、勝手にこちらが何もしなくとも人々との交流をしたり、気がつけば勝手に地域のプロジェクトに参加してその地域の困りごとを解決していたりします。

 しかも、そこで活躍している社員は決してエース社員ではなく、都会ではあまり目立たなかったような存在が地方で働くと大活躍をしていたります。

 これは地方では人やお金などあらゆるものが不足していることもあり、その地域に飛び込めば、利他的な行動が生まれやすく、自分から行動することが大きく影響しているのだと思います。さらにその行動から地域で価値を生み出していくことによって地域から自分を認めてもらえ、大きな自信にもつながっています。

 このような経験が結果的に会社の事業にも良い影響を与えていて、人材育成という視点でも地方で働くというのは非常に価値を生んでいると思います。

まずは直感的に一歩目を踏み出してみることが大事

 今回はサテライトオフィスのマッチングということですが、いきなり特定の地域にオフィスを構えるということはハードルが高いと思います。ただただ、経済的合理性だけを考えた条件ではうまくマッチングすることは難しいでしょう。

 そこに関しては興味を持った地域に一度ワーケーション体験などでまずは行ってみてそこで感じたことやつながりを大事にしてみるのもいいかもしれません。

 LACとしても、本事業は地域とのつながり、縁から発展してきました。もちろん、オフィスを導入する上でその他の合理性を考えることは大事です。しかしそれ以上にそこで生まれたつながりと直感的に感じたことを大事にして、まずは地方に一歩を踏み出すことから始めてみてはいかがでしょうか。

LACコミュニティでの集合写真

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