一般社団法人日本ワーケーション協会(以下日本ワーケーション協会)ではリモートワーク、ワーケーションが日本の新しいワーク&ライフスタイルになる事、そしてそれに伴い様々な地域が盛り上がっていくことを目指して新しいライフスタイルに向けた環境の整備、活動を行います。
現在自治体、法人、個人合わせ160を超える会員数を誇る当協会の代表理事である入江真太郎さんに、協会としての取り組みを踏まえたワーケーションの実情をお伺いします。
【入江 真太郎氏プロフィール】
一般社団法人日本ワ―ケーション協会代表理事。長崎生まれ、育ちは福島、秋田、茨城、徳島、兵庫と各地を転々、京都・同志社大学社会学部卒業。大阪府在住。(株)阪急交通社等で旅行業他様々な業種を経験する。その後、観光事業やその他海外進出支援事業等を展開。北海道から沖縄まで、各地と関わりを深めていく。その中で仕事スタイルとしてリモートワーク・ワーケーションを常にしており、地域振興、豊かなライフスタイルの実現が可能なワーケーションを事業として高い関心を持ち、協会設立に至る。新潟、長崎、山口、大阪、鳥取などで自治体事業や関連団体、一般企業のアドバイザーも務めている。
日本ワ―ケーション協会は2020年7月に設立しました。観光の仕事に携わるなかで海外のデジタルノマド(注1)たちが日本に来訪していることを見聞きしていたこと、また自分自身も仕事内容に合わせて場所を変えながら働くライフスタイルを以前から実践しており、いずれこのライフスタイルは日本のビジネスシーンにも重要な価値をもたらすだろうという感覚がありました。
注1 デジタルノマド:IT技術を活用し、場所に縛られず(国内外を問わず)、「ノマド(遊牧民)」のように旅をしながら仕事をする人達のこと。出典「JTB総合研究所」
その一方で、コロナ禍以前は、海外のデジタルノマドたちにとって、日本の「旅」の在り方やライフスタイルについての評価はあまり高くありませんでした。また日本の中でも、毎日満員電車に揉まれ、オフィスに出向いて働く以外に選択肢がないと考えている人も多く、なかなか「働く場所を変えながら豊かに暮らし働く」という考え方は普及していませんでした。そのような状況に課題を感じている中、時代の流れで、これまで当たり前と思っていた暮らし方や働き方が変わるきっかけになるのではないか、と感じたのです。今までやりたかったことをやろうと思い、立ち上げたのが一般社団法人日本ワ―ケーション協会です。
ワーケーションに関して、当時はまだ言葉が認知され始めた頃だったので、「そもそもワーケーションとは何か」という説明から始まり、新たな働き方の選択肢として考えてもらうためにイベントや講演等から活動を開始しました。
私はワーケーションとは場所にとらわれず働くという「ワーク」の視点だけでなく、そこから豊かな暮らしを実現できる「ライフスタイル」を考えることができる手段だと考えています。日本ワーケーション協会ではその豊かな暮らしを含めたライフスタイルを提案し、実現していくことを目指しています。
協会を立ち上げて以降、コロナ禍によって、世間でもオンライン会議は当たり前、必ずしも出社しなくてもいいという働き方のオンライン化が進みました。この流れが進んだことで、首都圏で高い家賃を払いつづけてオフィスを構えるという必要性はないのではないか、と企業側の考えも変わってきています。
実際、首都圏の企業の転出超過の流れも2年連続で続いており、今後もこの流れは進んでいくのではないかと思います。
一般社団法人日本ワーケーション協会には、自分たちの事業においてもワーケーションができる機会を増やしたい、働き方や暮らし方を見つめ直したいといった企業の会員様が徐々に増えています。
また、企業が多様な働き方や暮らし方を認めることが、採用に良い効果をもたらす可能性があることも指摘されています。現在、就職活動に取り組む大学生のうち、実に6割程度が、リモートワークができる企業を希望しているというデータもあります。
働き手がリモートワークを含めた多様な働き方を希望する以上、ワーケーションをはじめとする、多様な働き方の選択肢を持つということはメリットの部分が圧倒的に多く、むしろさまざまな考え方を持つ人々に合わせた働き方の選択肢を持てていないことが働く場所の選択として、プラスに働かなくなる時代になってきたのだと思います。
そうは言っても、ワーケーションとは、働く人々が「こんな働き方がいい、こんなふうに働きたい」と、自身の希望する生き方を実現できるための選択肢の一つに過ぎないと考えています。ワーケーションに限らず、企業が制度として色々と働き方を指定してしまうと結果的に個人の働き方の選択肢を狭めてしまうことになりかねません。例えば、オンラインワークをするより都心のオフィスに出社して働くという働き方が合っている人に対して「うちはこうだから」と多様化な働き方を押し付けてしまうのであれば、それは本末転倒だと思うのです。大事なのは選択肢があることだと思います。
本イベントのテーマ「サテライトオフィス」についても同じようなことが言えるのではないかと思います。制度として企業のニーズがあることはわかりますが、「ある地方のある一つの場所にオフィスを設置して働いてもらい、従業員はそこ以外では働けない」という形になってしまっては、個人が自由な場所で働くことができず、結果的に働き方が制限されてしまいます。
個人が場所に囚われることなく自由に生き方を選択し、豊かなライフスタイルを実現できるという状態を生み出せる働き方や暮らし方の手段が、私の考えるワーケーションの本質です。企業としても、あくまで働き手の立場に立った時にどのような環境を用意すべきなのか、社内外のどのような「生き方」のニーズに応えることが自社の在り方として理想的なのか、そういった意識で議論を進めていくことが大事になってくるのではないでしょうか。
ワーケーションを会社の制度として進めていく上で、社内でいきなりルールを変えるというのは難しいことだと思います。しかし、まずは近くで始めてみるなどそのルール内でできることはあると思います。例えば、東京都内で働いているならば、近場の神奈川や千葉でもいいですし、もっと言えばオフィスが大手町にあるなら渋谷でもいいと思います。そのようにして、自由な働き方とライフスタイルを実現するためには、小さな一歩を踏み出してみることがとても大事だと思います。日本ワーケーション協会でも、様々なワーケーションなどに関する疑問や悩みに寄り添っていますが、まずはワーケーション体験に参加してみたり、説明会を聞いてみたりするなど、小さな一歩を踏み出してやってみることを伝えています。そうすることによってこの働き方や暮らし方は合っていたとか、こちらの働き方や暮らし方は合っていなかったなど、気づきが生まれてくるはずです。まずはルールを無理して変えようとはせず、今できることから始めてみてはいかがでしょうか。
一般社団法人日本ワーケーション協会(以下日本ワーケーション協会)ではリモートワーク、ワーケーションが日本の新しいワーク&
株式会社LIFULLが提供する「Living Anywhere Commons(以下LAC)」は、「場所やライフライン、仕事など